スキー場でインカムがあると便利

スキー用のヘルメットに、バイク用のBluetooth ワイヤレスインカムを付けてみたら、かなり実用的だった。
Bluetooth Class1で、見通し数百mの間で(電話的に)双方向同時会話ができる。
私が買った物は4人まで通話可能ということだが、2人でしか使ったことが無いので多人数の場合にどうなのかは私はわからない。

昔からスキー場でアマチュア無線や特定小電力無線などを使う人はいて、今では携帯電話が日本のたいていのスキー場で使えるわけで、連絡手段ならそれで十分じゃん?と思われるかもしれないけれど、そうではなくて、滑ってる最中も操作ナシでずっと会話が可能というところがポイント。

私は以前、アマチュア無線や特定小電力無線の使用を検討したが、秘匿性がない・チャンネルの問題(原則、固定的に利用できない)・基本的にPTT単信(しゃべるときにボタンを押す・同時にしゃべれない)なので滑ってる最中に使うのは実用的でないなどの問題を考えてあきらめた。

次にDDIポケット時代のPHSのトランシーバーモード(親機を経由しない子機間通話という感じのモード)を利用し、これにイヤホンマイクをつけて実際にゲレンデで使ってみたことがある。これは同時通話が可能だしイケるんじゃないか?と思ったのだが、思いのほか電波が飛ばないし(数百mのゲレンデの上と下の間で通話不能だった)、切れたらかけ直さないといけないし着信側も受話操作をしないといけないし、たしか規制によって3分の連続通話制限時間があったし(いったん切れて自動再接続する規制回避実装になっていたと思うが)、なにより有線イヤホンマイクは取り回しが面倒で、一回で使うのをあきらめた。

その後、数年、インカム・トランシーバのことは忘れていたけど、スキーの際に必ずヘルメットをかぶるようになってから、バイク用にインカムが売られているのに気づき「ヘルメットにインカム組み付けたら、ヘルメットかぶるだけで準備OKで、便利じゃん?」というわけで、やってみたのです。

Bluetoothインカムは(たいていのBluetoothインカムがそうなっていると思うが)、
●1ボタンでコールでき
●着信側は自動着信する
ので、接続が切れたとしても再呼び出し・接続がほとんど手間無しで行えるのでとても便利です。
しかし
●基本的に見通し範囲内にしか電波が飛ばない
ので、(林だとか山とかで隔たれた)隣のゲレンデと通話ができたりは、まず、しません。

■ インカムでなにが便利なのか

●滑りのアドバイスを、1本滑り終わってからではなく、滑ってる最中にリアルタイムに行える
●後ろからすんげー速い人が滑ってくるから注意とか言える
●コース分岐点で「どっち行く?」「左かな?」「そっち◆」「ひー右にする」とか滑りながら相談できる
●先行者が「うおっ(雪面)超硬てえ!」とか悲鳴を伝えられるので後続は心の準備ができる
●リフト乗り場で先行者に「俺ちょっと遅れたから脇で待ってて」
●ビデオ録ってもらうとき便利
●大雪で数十m先も見えないような時でも会話しながら滑れるとちょっと安心
●うっかりOFFにし忘れてトイレに入っちゃうと恥ずかしい

まあそんな感じ。「大声出せばいいじゃん」シャイで小声な僕らには無理なんすよ。

■ 買ったのは B+COM SB4X という物

>私が購入したのは、サインハウスの B+COM SB4X Lite っていう物です。以前からあるSB4X から付属品を絞って安くしたもので、これはワイヤーマイクが付属しているタイプ(後述)
安くしたとはいっても1個で2.5万円は、まあ…高い。高いんだけどね、現時点では安いアヤシゲなのを試してみるより、結局、B+COMあたりを買っといたほうが良さそうですよ。でも安いので済んだらそれに越したことないじゃん?っていう気になっちゃうんだよねえ…。

これを、こんな感じに、ヘルメットにつけてみた。
helmet_comm

私はGIROのヘルメットを使っている。GIROのヘルメットは大抵、GIROオーディオシステムと称して、イヤーパッド内にヘッドセットのスピーカーを仕込めるようになっており、カタログにも個々のモデルにオーディオシステム対応が明記されているので安心(2022年追記。日本の代理店は(オーディオシステムを扱わなくなったためか)カタログ等で対応が明記されなくなってしまったみたい。英語版のカタログを見たほうがいいです)。

サロモンのヘルメットのカタログにも同様と思われる AUDIO READY というマークが多数のモデルにある。

2022 年追記。
ATOMICのヘルメットもスピーカーを仕込めるように作ってあった。
バイク用インカムメーカーのカルドがちょっと前から(米国では) PACKTALK SKI というスノースポーツ用インカムを売っている。
そのインストレーションガイドを見ると、イヤーパッドの中にヘッドホンを仕込めないヘルメットの場合は、イヤーパッドの外側(イヤーパッドと耳の間)にベルクロでスピーカーを貼り付けろ、となっている。ちょっとキツいんじゃないかという気がするが。耳が痛くなりそう。

■ B+COM SB4X の取付・マイク

バイク用のヘルメットは大抵耳まで覆われているので、バイク用インカムは耳のあたりに取り付けるのが前提になっている。
しかし、レーサー用でもないかぎり、多くのスキー用ヘルメットは、イヤーパッドはソフトな別パーツになっていて取り外し可能なので、そこにインカムを取り付けることができない。(と、私は思ったけど、付けてしまってもいいかも?ただ取付には工夫が要るだろう)

しかたがないので耳の上あたりに付属の面ファスナーで取り付けたんだけど「それにしても上すぎやしないか?」と思われるかもしれない。
なぜここに付けているかというと、耳のすぐ上にはゴーグルのバンドがかかるのである。そこは避ける必要があるのでこんな位置なのです。

で、そんな位置に本体を付けると、こちらのアームマイクだと口元にマイクが来ないんじゃないか?という懸念があった。B+COMのマイクは本体からまっすぐ突き出るものなので。
そのため、私はワイヤーマイクを選んでみた。

バイク用インカムのワイヤーマイクというのは、普通のコード(=ワイヤー)の先っちょにマイクが付いている、というもので、本来はフルフェイスタイプのヘルメットの内側に沿わせて配線して、口のまん前にマイクを取り付ける、というタイプ。

最初このマイクのコードをヘルメットのストラップに共締めしておいて、マイクを頬というか顎のあたりでプラプラさせておいたのだが、それだとちょっと声が遠くなってしまった。

それで、何かでフレキシブルなマイクブームを作ってヘルメットストラップに共締めして、それにマイクコードを沿わせて口元まで持ってこよう、と思ったが、なかなかいい素材が見つからなかった。喉元につけとくものなので、硬いと嫌だ。コケたとき刺さったらシャレにならない。

結局、現在は、ビニタイ(細い針金にビニールが貼ってある、ネジって縛る奴。巻いてあるケーブルとか買うとよくビニタイで縛ってある。あれです)を、熱収縮チューブに入れて収縮させたものをマイクブームとして使っている。
これでも針金芯だから不安だけど、まあ、熱収縮チューブでカバーしたから大丈夫だろう、ということで。。

B+COMのワイヤーマイク付属の風切り音よけスポンジは、フルフェイスヘルメット内に貼り付けるのが前提(両面テープが付いている)なので使えない。
私は、ICOM HS-88 というヘッドセット用のスポンジを買ってはめている。ちょっときついけどかえって外れにくいと思われ好都合。(ヨドバシで通販で買える)

2017/01 追記。ヘルメットを買い換えたのを機に、ためしに、B+COMのマイクをアームマイクに交換してみた。マイクは口元までは届かず、ほおあたりになるが、会話に支障はないようだ。ソロでマイク使わないときは、まっすぐ伸ばしておでこの上あたりにしておく。

これで、大雪のかぐらスキー場で足をとられて前転でコケたりしたが、とりあえず壊れたりはしていない。

■ B+COM SB4X 雑感

B+COM SB4X ですが、インカムとして使っている時、時々ジージーとノイズが乗ったりするが、だいたい見通し5~600m以内程度の距離で使っていたが、ほぼ不満はなかった。
ジーというノイズは、リフトに乗っているときによく乗る。なぜだろう・・・。

インカム動作としては、音声を感知している時だけ送信、といった小細工はしておらず、ずっと送信しっぱなしのようである。私はこれはライブ感があって好ましいと思う。

一人の時はこれをBluetoothヘッドセットとして、リフトに一人で乗ってる時はスマホからA2DPで音楽を聴いているが、標準添付のスピーカーが意外に音が良かった。よっぽどウルサイ人以外はこれで満足して音楽が聴けるんじゃないかと思う。別売りでNEOというもっといいスピーカーまで用意されているが、そっちだともっといい音なのか?でも私は標準添付ので十分だと思う。

操作性はシンプルでグローブしてても扱いやすく、おおむね良好。(でもリダイヤル機能はいらないよ!

しかし、AVRCPが Nexus 6 + PowerAmp の組み合わせでは曲送り/戻しが効かないことがある。どこが悪いのかわからない(B+COMのせいではないかもしれない)。

ボリューム設定を記憶せず、電源OFFにすると音量が元に戻ってしまうのは不満。これを「音量デフォルト機能」と強弁しているので失笑してしまう。どうもこの会社は時としてこういう強弁をする傾向があるらしい?
→2018/08 にファームウェアがV2.3にアップデートされ、ボリュームを記憶するように改善された。

■ インカム雑感

今季、スキー場で、バイク用のインカムをヘルメットに付けて使っている人たちを(気づいた限り)2組見たけど、どちらもSENAのを使っていた。
SENAのインカムは、アームマイクが、インカム本体下部から出るようになっているので、B+COMよりアームマイクが使いやすいかな?という気がする。

ウインタースポーツ・マリンスポーツ対応を銘打ったBluetooth インカムで Bb TALKIN’ (ビービートーキン)というのがあるようだ。
透明ケースに入れて防水するあたり、GoProを彷彿とさせる。
使い勝手や音質とかはどうなのかなあ?

別冊山と渓谷 skier 2017 を見たら、あの海和俊宏さんのヘルメットに Bb TALKIN’ らしきものがついていた。スクールで使用しているのだろうか。
→実際にBb TALKIN’ を使用している旨、ブログに書いてあった。

日本では今やたいていのスキー場でケータイ使えるんだから
(2010年くらいまでは、ドコモしかダメとかそういうスキー場も多かったが・・・)
普通のBluetoothヘッドセットをつけて、スマホで通話(またはLINEとかSkypeとかGoogleハングアウトとかの無料IP通話)状態にしておくだけでも、けっこうイケるかも。でもゲレンデ全域でケータイの電波が来てるとは限らないので、切れたらつなぎなおす手間がある。またスマホの電池消費が気になるかもしれない。

Bluetoothインカムには「ユニバーサルインターコム」等と称して、インカムに、普通のBluetoothヘッドセットをHFPで接続して、インカム ←→ 普通のBluetoothヘッドセット間で通話を可能にする機能をもっているものがある。B+COM SB4X にも「ユニバーサルインターコール」と称するその機能がある。
相方のB+COMがまだ用意出来ていない時に、仮運用として、相方用に普通の片耳ヘッドセット(Jabra MINI)を使用してゲレンデで通話してみたことがある。
相方は片耳に Jabra MINI を付けて、バラクラバをかぶり、その上から、片耳のイヤーパッドをとりはずしたヘルメットをかぶって使用。
こんなもんでも、思いのほか風切り音も気にならず、声もよく拾い、けっこう使い物になった。
ただし、Jabra MINI はいちおうスペックでは Bluetooth Class1 なのだが公称通信距離30mということもあり、B+COMどうしほどは遠距離通話ができない。数十m離れてしまうとしょっちゅう通信途絶警告音が鳴って会話不能に陥るのだが、また近づけば、大抵の場合、通話回復するのでほぼ手間いらずで使用することができた。

■ BONX

BONX という、昨年秋にクラウドファンディングしていた「ウェアラブルウォーキートーキー」を標榜するプロダクトがある。
(ハンディトランシーバってすでにたいていほぼウェアラブルじゃね?という気もするが)

これは、言ってしまえばごくありふれた片耳タイプのBluetooth Class2ヘッドセットに過ぎないのだが(多少アウトドア向きに工夫してあるのと、BLEでスマホと何かやりとりする機能があるそうだが)、それプラス、各人のスマホにインストールした専用アプリを使って、通話はスマホ間でVoIPで行うというもの。
日本ならたいていのスキー場でケータイ使えるからハードはこんなもんでいいんじゃね?てかケータイ併用なら遠距離だって問題ないし、かえってよかったりして?一発作ってみちゃわね?的なプロダクト。

これに投資して昨年末に入手していたのだが、どうもアプリが最初のふれこみどおりには機能しておらず不安定だったので個人的にはあまり何度もテストしてみる気になれなかった(その後アプリの改良は続いているが、Android用は2016/03現在も未だβ版)。滑れる時間は(今年は雪不足で特に)限られているので、そうそうβテストに協力し続けることもできないよ。

方式的にどうしても音声遅延がある点と、スマホの電池を消費する点は、気になる(現状、バッテリ容量に余裕のあるAndroid機ではあまり問題にならないが、少しバッテリーがヘタってきたiPhoneで使う場合は厳しい感じだった)。

投資者に行き渡ったあと、すぐにも一般売りを開始するのかと思っていたが、まだ一般売りはしていないようだ。

現在のBONXヘッドセットのハードウェアには、A2DPでステレオの音を聴くと「右チャンネルの音しか出ない」という問題がある。これは音楽も聴ける片耳ヘッドセットとしては致命的欠陥だと私は思う。そういう仕様だと分かっていたら私は買わない。左右に音振り分けてる曲聴くと違和感ハンパないよ?JabraとかプラントロニクスとかのA2DP対応片耳ヘッドセットではちゃんとモノラルミックスダウンして出してるよ?

音質も、もうちょっといいかんじのスピーカー使ってくれないかしら。JabraとかプラントロニクスのA2DP対応片耳ヘッドセットに全然負けてるよ。(これは防水対応の点でしょうがないのかもしれないなあ・・・)

BONXは現在のところ右耳装着用のラバーしか添付されていない。左耳用ラバーも用意する予定となっているし、右耳用ラバーをひっくり返せば左に付けられないこともないけど…。

個人的感想としては、投資者は有償βテスターになったような感じ。それはそれでかまわないので、次回もっといい製品が出たらいいなと思う。(現行バージョンを一般売りはするのかなあ?)
個人的にはアウトドアで高速移動してしまうスポーツで、ケータイ電波頼みの常時通話は、やはり少し苦しいのではないかという気がする。でもBluetooth Class1インカムでは電波の届く距離には限りがあるので、そこはケータイ電波を使う方式にはアドバンテージはある。
・・・次回作はBluetooth Class1とハイブリッドで、とか、無理かしら?

追記。小改良され「BONX Grip」という名前になって2016/12あたりにようやく一般販売(販路は限定的?)されたようだ。
指摘したような問題がどうなったか、私は知らない。

■ 遅延時間

参考までに、Bluetooth Class1インカム(B+COM)とBONXの音声遅延時間を実測してみた
(近距離で「わっ」とか言って、それが相手方スピーカー(イヤホン)から聞こえてくるところを、マイクで録音しておいて、その波形を見て測定)

BONX はAndroid Nexus6, HUAWEI GR5 間で使用
(BONX β v0.9.6 )

BONX 500~750msほど
B+COM 65msほど

BONX Android βアプリは当初は会話し始めてしばらくするとものすごい遅延が生じるようになったり、不安定だったが、最近のバージョンは改善されたみたいだ。それでも 0.5秒以上の遅延がある。
これだけ遅延すると写真撮ってもらいたいなんていう時・緊急回避の叫びの時、なんかは、ちょっとイヤかもしれない。

コメント

  1. chedie より:

    始めまして、chedieといいます。
    貴殿の内容すごく参考になりました。
    私は音楽を聴くわけでも電話で使用することもなくただ通信の声が大きく明瞭に聞こえればいいだけで
    難聴の子供との通信のため(スキーの際は気温低いので補聴器をはずす必要があるため)に何かいい通信手段はないかと特小などのトランシーバーを考えていたのですが、バイクのインカムを知りこちらを見つけました。基本見える範囲で一緒に行動するのでBluetoothのインカムにしようかと考えていますが、唯一、記事のビーコムは店頭にデモ機がありインカム通信の音質・音量はいいなと(店の中で動いてないときに聞けば当然ですが)感じましたが、防水はどうでしょうか?本体は当然本体は防水でしょうがイヤホンマイクとの接続部分とかも実際使用されていかがですか?またシーズン通して使用されての通話品質・機器の品質など状況はどうでしょうか?
    操作性からsena10sがいいかと思ったのですが、防水性に不安がありそうなコメントが多く、ビーコムsb4x lightかBb talkingを候補に考えています。
    突然で申し訳ありませんが、宜しくお願い致します。

  2. xo より:

    こんにちは。
    2シーズンと少し、ずっとこのSB4X Liteを取り付けたヘルメットを使い続けていますが、特に問題は生じてません。
    イヤーパッドに仕込むスピーカーとの接続は、miniUSBコネクタで、一見、防水性など頼りなく見えますけれども大丈夫なようです。
    (もっとも、私は主に晴れそうな日を狙って滑りに行くので、大雪の日に滑るのは少ないですし、雨の日はまず滑りません)
    B+COMのマイク(端子)は、以前のモデルは弱かったなんて話もネットでみかけましたが、SB4Xのは特に問題ないように感じてます。

  3. chedie より:

    返信ありがとうございました。
    よく検討して決めたいと思います。

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